人類最速を競う100m走は陸上競技の花形種目です。
男子は2009年の世界陸上ベルリン大会でウサイン・ボルト選手が達成した9秒58という驚異的な記録が達成されました。
女子はフローレンス・ジョイナー選手が1988年に10秒49を達成し、以後、この記録は破られていません。
日本陸上の100m記録について
日本では1998年に伊東浩司選手が10秒00をマーク。その後、10秒の壁を超える選手はいませんでしたが、2017年に桐生祥秀選手が初めて9秒98を記録しました。
9秒台突入まで19年かかりましたが、その後、更新され現在は山縣亮太選手の9秒95が最速となっています。
女子は2010年に福島千里選手が達成した11秒21が日本記録です。
100m走の限界は?
100m走の世界記録はほぼ限界に近づきあるといわれていますが、9秒4台は可能といわれています。
スポーツ科学の観点からみるとまだまだ改善の予定があるからです。100m走は4局面で分析されています。
1次加速
スタートダッシュから10~20mまでの区間で、クラウチングスタートの姿勢から上体を起こしながら、ピッチを速め加速していきます。
2次加速
20~50mの区間で、ストライドを増幅させ、最大スピードに到達します。
最大疾走
50~80mの区間で、ストライドと姿勢を保ちながらスピードを維持します。
減速
80~100mの区間でレース終盤となり、スピードは徐々に落ちていきます。
走るスピードはピッチ(歩数)とストライド(歩幅)の積で表されます。どちらを重視するかはアスリートによって異なりますが、9秒58を達成したときのウサイン・ボルト選手の場合、平均ピッチは4.271歩(歩数40.92歩)、平均ストライドは244.4cmでした。
そして、ボルト選手は最大疾走の維持時間が長く、減速段階のスピード低下が他のアスリートより優れていることがわかっています。
ボルト選手の記録を破るにはレース後半における減速の低減がポイントになりそうです。
また、スタートのタイミングも重要で、記録に大きく影響するとされています。ボルト選手はフライングで失格したこともあり、スタートが得意ではありませんでした。
フライングはスタータのピストル信号からスピーカーで鳴らされ、その時点から0.1秒未満のスタートはフライング判定されます。そのため、フライングとならない最速スピードでスタートすることも重要です。
他にも風や気圧も影響するため、選手自身だけではなく環境も記録達成に影響します。